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100周年記念 特別対談
箕面自由学園の今後のグランドビジョン

箕面自由学園で働くことになった経緯と、
学園にどんな印象を持っておられたかを教えてください。

学園長:私は、本学園で3校目の勤務となります。最初の高校では地歴・公民科の教員として14年間勤務しました。進学実績を出すことが 至上命題という教員生活で、コンスタントに合格者数は出してきましたが、生徒にとって大学に行くことが人生の最終目的になっているのを見るたび疑問を感じていました。2番目の高校は大学附属で、大学にはほぼエスカレーターで進学できました。しかし「大学入試を人生の節目(通過点)として踏ん張り、自分で選ぶ」ということに意味があると感じておりました。
そんな時「箕面自由学園に校長として来ませんか」と平井前理事長から打診があり、最初はお断りしましたが、いろいろお話を重ねる中で勤務させていただくことを決めました。1年間高校の副校長を務めたあと校長になって、今年で 7年が経ちます。4年前から中学校の校長も兼務し、昨年6月には学園長になりました。
箕面自由学園の第一印象は、男女共学の穏やかな学校で良い生徒が 多いという感じでした。反面、もっと自分の能力を信じ、貪欲にチャレンジしてもいいのではないかと思いました。そういう足りない部分を伸ばしていきたいという想いは今でも持ち続けています。

理事長:私は前職の百貨店時代、平井前理事長とは上司と部下の関係でした。営業や営業企画、経営企画に携わり55歳で退職したのち、金融業界に5年間勤め、60歳の節目に前理事長から声をかけていただきました。
学園での勤務を決めた理由は、前理事長から伺った学校改革の話に興味を持ったこと、そして、田中学園長が不退転の覚悟で学校を良くしたいと思っておられることがひしひしと伝わってきたからです。
箕面自由学園に関する情報は多く持っていませんでしたが、学生時代の友人の結婚相手が学園の出身で、とにかく元気で明るいという印象がありました。常勤が始まる前に、そんなことを思い出しながら2度ここに足を運ん できたのですが、坂下から坂上まで歩く間にすれ違う生徒は今もやはり元気で笑顔が良く、きちんと挨拶をしてくれました。脈々と流れる校風がある素晴らしい学校だなと思いました。

対談写真

現在の箕面自由学園の魅力はどのようなところだとお考えですか?
またそこに至る過程として、着任後ご自身がどう取り組んでこられたかを教えてください。

学園長:この学園に来るまで 25年教員生活を送ってきて思うのは、大学入試に合格したあとの「学び」の重要性です。18歳人口も減ってきているので、進学も就職ももっと柔軟に考えて「自分はこう生きていきたい」という選択をしながら高校時代を送ってほしいと思います。校長になってからずっと言い続けていることは「自分の人生を自分でデザインしよう」ということ。「自分で決めて、努力して努力してつかみ取る」ということを生徒に繰り返し伝えていて、今ではだいぶ実現化してきたかなと思っています。
一例で言うと、学校を朝7時から夜7時まで開けているので、その間学校を自由に使いなさいと言っています。授業が始まる9時10分までの2時間は、朝早く来て勉強しても良いし、クラブ活動をしても良いし、ゆっくり来ても良い。実は教師にとってもこの朝活は大切な時間で、少し早めに来て生徒の面倒を見たり、一日の授業の準備をしたりします。そういう朝の時間の使い方を、先生も生徒もやらされるのではなく、自分で考えてできるようになってきたと思います。
自由な発想で物事を考えられたら「こうでなければならない」という拘りもなく、自分でやってみようというチャレンジ精神も生まれます。そのあたりが現在、箕面自由学園が評価されている理由だと思いますし、生徒が毎日笑顔で学校に来ているというのは、自己達成感や「自己実現できている」という実感があるからではないかと思っています。

確かに、チャレンジ精神が能動的に発動されているというのは見ていてわかります。
教職員・生徒の意識が変わった要因とは何でしょうか。

学園長:一番大事なのは、先生方が笑顔で挨拶をし、前向きに働くということで、そのように働ける職場環境づくりに注力することです。数字的なノルマを課したり、こういう補習をしてくださいとか言うのではなく、先生方が考えて、こうだろうかああだろうかと自然発生的にいろんな意見が でてくるのが良いと思います。行事も不要と思ったものはなくし、先生方が主体的に動けるように「こんなことをやりたい」と思うことはやってみようと形にしてきました。
今年は高校に2,133人の生徒が在籍していますが、私は2,133人の学校でのお父さんだと思って、高校1年生の時に各クラスを回って校長講話をしています。1年生は21クラスあり、現在約860名分の感想文をチェックしているところです。高校3年間の間に、1年生で 2回、2年生で 1回の合計3回行い、その都度彼らの感想文に目を通してコメントを書くことにしています。やりとりはすべて保管していて、一人の感想文を三つ並べるとその生徒の成長がよくわかるようになっています。私は外部から来た人間ではありますが 、この学園の今までの長い歴史や文化を尊重しつつ、私なりに良いと思ったことを実行に移すという形で7年間やってきました。校長である私が誰よりも一番汗をかくことが必要だと思っています。

理事長:私は民間企業に38年勤務しましたが、ここ10年ぐらい離職率がとても高いと感じていて、だいたい入社3~5年くらいで半数ぐらいが 離職、転職していくことがずっと気になっていました。社会人として頑張り続けることが できる人材は必要なので、そのために大学では何を学び、高校では何を学ぶべきかと突き詰めて考えていた時に「自分の人生は自分でデザインする」という学園長の教育方針に出会いました。
特に高校では、1年生からしっかりと学習習慣を身につけさせます。これは、社会に出た際に課題解決型で動くこととまったく一緒のことなのです。高校生の間に、自分の人生は自分でデザインすること、物事は自己責任で決めてつかみ取りに行くこと、そして学習習慣を身につける努力をすることを実行すれば、3年間で生徒は大きく成長し、人間形成の礎になると思います。
私は学園に来た当初は渉外室長でしたので、学校説明会後の個別相談会で多くの保護者の方ともお話しました。最初に私が 民間企業出身であることから話し、先ほどの離職率の話や「大学に入ることがゴールではなく、社会に出て踏ん張って生き抜いていく力が 求められている」という話をしたあとにこの学園の方針を説明すると、保護者の皆さんは非常に共感されます。学力もさることながら、人間力をつけていくことが大切だという学園の方針が、保護者の価値観とマッチしているのだと思います。
そんな中で、民間企業出身だからこそ実現可能なルートで教育に寄与できるのではと考え、電通グ ループさんや箕面のキューズモールさんにご協力いただき、生徒に社会体験をさせるのはどうかということで立ち上げたのが「スマイルギフトプロジェクト」です。生徒自身が企画・準備し、当日の運営まで主体的に行うというもので、今年で 2年目になります。

「自分の人生を自分でデザインする」「課題解決型」などのお話が出ましたが、
幼少中高への波及、落とし込みはどうお考えになられますか?
また、幼少中高があることのメリットは?

学園長:私は中学校の校長を兼務した時から、高校の方針の土台のようなものを中学校でも作っています。高校ほど「自由に選ぶ」という訳にはいかないですが 、高校の自由な発想で動いているところを中学校にも落とし込んでいます。小学校・幼稚園に関しては、きっちりと元気よく挨拶ができるようにしていますし、人間として一番大事なしつけ教育ができていると言えます。
また、小学校・幼稚園の行事に中学校や高校の生徒が呼ばれて一緒にコラボすることがあります。例えば吹奏楽部の演奏とかチアリーダー部の演技を披露してくれて、こういう本物に触れる機会があるというのは非常に良いことだと思います。幼小中高とあれば、大きいお兄さんやお姉さんがいることはいろんな意味での刺激になりますし、逆に幼稚園児や小学生の小さい子どもに対する気配りとか配慮が自然に身につきますので、お互いにとって良い関係であると言えるでしょう。

講和風景

理事長:元気に笑顔で皆しっかりと挨拶することは、幼稚園児から高校生まで 共通してできています。挨拶はいつの時代も、どの世代でも重要な基本の動作です。また、この学園には折に触れて縦の関係をつなぐイベントがあり、その中で人に対する優しさや思いやり、敬うことなどを学ぶので、心の教 育につながっていると思います。
私は理事長になって、登校時に本部前で挨拶をして生徒を出迎えるようにしています。一人ひとりの目を見て挨拶することで、表情や雰囲気の変化に気づくことができればと思っています。

学園長:この学園で感じることは「感謝」という言葉を先生も生徒もよく使うということです。高校・中学校のチアリーダー部や吹奏楽部など、日本一を取っているクラブが「周りに押し上げてもらっているから自分たちは活動できているんだ」という気持ちを持って、それを表明しているからだろうと思います。校長講話の感想文の中にも「感謝」という言葉が 良く出てくるのですが、これは挨拶と同様、この学園の目に見えない良き伝統であり文化だと思います。

今後100周年を経て、更なる箕面自由学園の発展に向けてお話をお伺いします。
本学園が掲げる「建学の精神」における“教養高い社会人の育成”の意味も
新しい時代の訪れとともに変わっていきます。
改めて「建学の精神」をどう捉え、どう実践していかれるのでしょうか?

理事長:今現在何が起こっているかというと、時代の激変とそれに準じて人々の価値が 大きく変わってきているということです。日本の経済社会は先行き不透明で何も見えず、その中で学園の生徒たちは社会に出て頑張らないといけない。だからこそ自分で選んで決めてチャレンジをしていくことというのは重要になってきますし、これは普遍的なものだと思います。学園には大学がありませんので、卒業後、社会に出ていくための礎を作っていければと強く思っています。

学園長:教育はよく「不易と流行」と言われますが、流行の部分であるICTに関しては、小学校・中学校・高校にいち早く取り入れており、コロナ禍で対面授業が難しくなった時も、一人1台ICT(タブレット)があるので常に授業を止めずにやってきました。そういう技術ツールを使って最先端を走っている学校というように紹介されることもありますが 、教育という観点で言うと不易の部分が一番大事だと思っています。そういう意味では、教養高い社会人というのは、自分が与えられた場所で「ここは勝負どころや」という時に、グッと力を込めて踏ん張り、努力することが できる人のことだと思います。私たちはそういうことをクラブ活動や学習を通じて伝えていく義務があると思います。
また、今の世の中に必要とされる学校になるには、不易と流行の部分を両輪でうまく動かしていくことが大事だと思います。そのために一番勉強をしないといけないのが教員です。世の中の動きを敏感に察知して生徒に伝え、外部の人の力も借りて教育現場に落とし込んでいくことを考えていかなければなりません。

箕面自由学園の今後の課題は何でしょうか。

理事長:一つ目は財政基盤の安定です。学園全体で見ると安定していますが 、もう少し中身を見ると、高校の入学者数が非常に大きく増えていることで支えられているのがわかります。少子化が続く中で幼稚園・小学校は特に、市場の中でのポジションをもっと明確にしていかないと厳しいですし、更なる特長化が必要となります。時代の変化に対応した改革が必要になってきたと思います。
二つ目は、時代と価値観が非常に変わってきているので、先生だけでなく我々も含めて全員がしっかりとアンテナを張って情報を集め、時代がどちらに行こうとしているかをインプットしなければならないということです。
三つ目は一枚岩の組織構築です。組織構造の話をする時に「一枚岩になっている組織は盤石強固で他の追随を許さない」とよく言われます。一枚岩とは何を指しているのでしょうか。これは各校園の全職員が、今後の箕面自由学園がめざす方向や教育活動の内容を知り、理解して主体的な行動に移すことが大事で、それが できれば強い組織ができるのではないかと思います。説明会や会議など、いろいろな場面で情報のオープン化、共有化をしていくことが必要だと思います。

学園長:これからの学校という場は何を求められるのでしょうか。今回コロナ禍では在宅ワークというかたちでオフィスが不要になったという事例があります。アメリカではキャンパスのない大学もできました。ICTが整っていて一人一台のパソコンがあれば、学校は本当に必要なのでしょうか。この問いについては次のように思います。
私はこれまで、もっと生活の場や学びの場の整備が 必要だと言ってきましたし、今でもそう思っています。しかし生徒たちと話をしていると、案外、人が集まり触れあうことで刺激を受けたり、人と切磋琢磨することに日々の喜びを見出していると感じます。そういう意味では、大人目線できっちり整備していくのではなく、少し物足りない部分、あるいは子どもが工夫するための余裕や遊びの部分を残すことで、新しい教育の工夫が生まれるのかもしれません。そういう子どもが伸びていく仕掛けを学校という現場で何かしたいと思いますし、「学び合う場、生徒が集う場」としての学校はやはりこれからも必要なのだと思います。
また、すでに学校で議論の対象になっていますが、安全管理については今後も対策を施さねばなりません。広大な敷地の中の、社会に開けた学園であればあるほど、安全管理に気を配っていかないといけない、それが大きな課題ではないかと思います。

今後、お互いに期待することを教えてください。

理事長:学園長には教育業界のフロントランナーとして、各校園をどんどん引っ張っていってもらいたいですし、人材育成の投資をして強い教員集団を作ってほしいです。現在コロナ禍にありますが、これは3年ほど前までは想像もしなかった事態です。在宅で授業を受けるといった状況も予測していませんでしたし、そこで初めてスキルがいる、環境がいるというように学校としての対応が 必要になりました。今後も変わりゆく時代に合わせて対応できる教育環境の整備に一緒に取り組みたいと思います。

学園長:この学校にある四つの校園の動きを、常に肌で感じていてほしいと思います。我々は目の前の生徒を見て動きますので、全体から見ると少し調和が外れていると感じたら教えていただきたいですし、第三者的、客観的な目で見ていただきたいです。
学校には学校年齢があり、この学校は創立100周年に近くなっていますが、私の感覚ではまだまだ若い学校です。どんどん新しいことを取り入れて、前へ前へと進んでいる学校だ から、失敗することもあれば行き過ぎていることもあると思います。渦中にいるとわかりづらいので「何かあった時は理事長が注意してくださる」という安心感を持って前へ進みたいです。もう一つは、すぐにできるかどうかは分かりませんが、通学路など学校外の環境整備を考えています。市や府、国とのやり取りはもちろん、地域の中の学校であることを考えれば、地域の方々ともうまくやっていかなければなりません。生徒数がかなり多くなっているので、生徒の安全確保という意味でも周囲との連携は大切です。そういった地元とのつながりの役目を担っていただければと思います。

同窓生へのメッセージをお願いします。 理事長:この学校は、建物の耐震工事は完了しているものの各施設の老朽化が進んでいます。創立100周年を機に、特設サイトでは教育環境の整備を目的とした記念募金がスタートしています。同窓生の皆様にはこの記念募金の趣旨にご賛同いただき、我が 校の更なる発展を期してご支援ご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

松矢理事長

これから箕面自由学園の入学を希望する方へ
メッセージをお願いします。
学園長:今後100周年を経て新たな100周年に向かっていくのですが、学園の根本にあるのは「元気・勇気・笑顔」という言葉ですから、笑顔を絶やさずしっかり挨拶が できて、人に心配りができるような生徒づくりをこれからも基本としていきたいと思います。学力の向上やICTのスキルなど、世の中が 必要とすることは当然やっていくとして、人として大事なことをこの丘の上で 教えていきたいと思っています。そして幹の太い生徒を育てていけるよう、我々教職員一同、これからも一丸となって努力していきます。受験をお考えの皆さん、この丘の上で、かけがえのない友との時間を過ごし、自分の手で未来を切り拓く「自分力」を養いませんか 。君の入学を待っています。

田中学園長

箕面自由学園100周年記念